溪声山色(けいせいさんしき)

溪は谷とも読みます。谷の声、山の色。
朝晩が涼しくなり、秩父の山々が鮮やかに見えるようになりました。

「峰の色 谷の響きも 皆ながら 我が釈迦牟尼の 声と姿と」

道元禅師和歌集

峰の色や溪の響き、その全てがお釈迦さまの、声であり、姿であるといったことでしょうか。

福井県にあります、曹洞宗の大本山永平寺は、鎌倉時代に道元禅師が開かれたお寺です。道元禅師は宋(現在の中国)から、お釈迦さまから達磨大師などを通じ綿々と伝えてこられた禅の教えを日本に持ち帰ります。初め京都に日本で初めての本格的な坐禅道場を開き、人々に布教しますが、一部からの迫害を受け越前国志比庄に移り、のちに永平寺となる大仏寺を建立しました。

永平寺を訪れた方はご存知がと思いますが、永平寺は福井の市街地から車で約30分、山深い中にあります。七堂伽藍といって山の斜面に僧堂(坐禅堂)をはじめとする修行に必要な建物が荘厳な佇まいとして見ることができます。
すぐ近くに永平寺川が流れていて、そのせせらぎが聞こえてきます。今もなお、多くの修行僧が、この永平寺で厳しい禅の修行の中にいます。

道元禅師は、その昔、この永平寺で、この歌を詠まれたのでしょう。

修証一等といい、修行と悟りは一つであると考えます。
修行をしている時に目に見えるもの、耳に聞こえるもの、その全てが仏であると。何も特別なところに仏があるのではなく、日々私たちが生活している、この現実の中にこそ、仏はあり、修行によって悟りの世界が現前するのです。

今月の禅語(令和5年11月)

投稿ナビゲーション