涅槃妙心(ねはんみょうしん)

「涅槃」とは、サンスクリット語の「ニルバーナ」の音写で、吹き消すことがその言葉の元の意味です。仏教では、修行により、貪、瞋、痴の三毒の煩悩を吹き消した寂静(お悟り)の境界であります。
「妙心」とは、その心です。

また、お釈迦さまの入滅(死)を涅槃といいます。2月15日は、お釈迦さまがお亡くなりになった日で、「涅槃会」といい、各地でお釈迦さまのご遺徳を偲び、供養の法要が行われます。

さて、お釈迦さまには、多くのお弟子さんがいましたが、その中でもお釈迦さまの10大弟子の一人で、常にお釈迦さまにお近くに従っていたのが摩訶迦葉尊者(迦葉さま)です。
ある時、お釈迦さまは、霊鷲山という場所で、大勢の弟子たちの前で説法をすることとなりました。大勢の弟子たちが、お釈迦さまのお言葉を待っていると、お釈迦さまは、ひと枝の華(優曇華)を念じて、ただ瞬きをするばかりでした。誰もが、その意味を理解せず戸惑っていましたが、ただ一人、迦葉さまだけは、それを見て微笑みを浮かべました。拈華微笑のお話です。

そしてこの時、お釈迦さまは、迦葉さまに向かって、「吾に正法眼蔵涅槃妙心有り、摩訶迦葉に付嘱す」といい、お釈迦さまの教え(法)が、そのまま正しく、迦葉さまに伝わったことを証明されたと言われています。

仏の教えというものは、言葉や文字だけで全てを伝えることはできません。そこには修行といった行為や実践があって、さらにお師匠さまと弟子が顔を合わせ相対することにより、初めて正しい教え(正法)が伝わるのです。

お釈迦さまから摩訶迦葉尊者に伝わった正法は、その後、インドで28人の祖師方を経て禅宗初祖の達磨大師に伝わり、さらに中国に渡った達磨大師からお祖師さまを経て道元禅師のお師匠様である如浄禅師に伝わり、道元禅師が日本に持ち帰った訳であります。
そして、日本において、歴代のご住職さま方を通じて、今私たちは仏の教えに出会うことができたのであります。私たちは、その教えをしっかり受け止めて、さらに後の世に伝えていかなければなりません。

今月の禅語(令和6年2月)

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